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大腸癌肝転移の集学的治療

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雑誌:Annals of Gastroenterological Surgery

Paris Sud UniversityのRene Adam先生と熊本大学の北野先生のReview

Introduction

世界で1年に140万の新規発症の大腸癌があり、60万人が死亡し、うち40万人が肝転移に関連する死亡である。

日本を含むアジアでは大腸癌は2-4倍に増加している。

肝転移の8割は切除不能の状態で見つかる。切除できれば、33-50%が5年生存可能である。

近年は、1.化学療法が進歩し、R0切除は87%で可能。2.手術適応が拡大している。3.門脈塞栓・RFA・二期的切除・ALPPSなどの外科手術の進歩により切除可能例が増加してきている。

集学的治療

化学療法は1990年以前は5-FUのみ。
1990-2000年はFOLFOXとFOLFIRIが出現。
最近はFOLFOXIRIが出てきており、抗EGFR・抗VEGF抗体薬が出現してきている。

切除可能になれば、切除不能肝転移の5年生存率は32%ある。

全身化学療法抵抗例では肝動注療法も有用で、5-FU+オキサリプラチン+イリノテカン+全身セツキシマブで、R0-1切除が30%に得られる。


MSI腫瘍では抗PD-1抗体が40-69%で有効であり、肝転移の切除可能性については今後の評価が必要。

2か月ごとに切除可能性について判定した方がよく、1st-lineは4か月は行ってダメなら、2nd-lineへ。6か月での切除を目標とする。

病勢コントロールが付かない例では切除はしない方が良い。

切除適応の変遷

昔は3個・5cm未満などの基準があったが、現在は10個以上あっても、切除可能であればよい。

R0の方が予後が良いが、血管に接する病変であれば、R1(マージン1㎜未満)もやむを得ない。

手術手技の進歩

門脈塞栓術により、切除可能症例が増加した。二期的切除は25-38%で施行不能例がある。ALPPS手術が登場してきている。肝容量増加は74%あるが、手術関連死亡率12%とかなり高い。ALPPS手術についてはさらなるStudyが必要。

移植は以前は適応外であったが、5年生存率が18%程度であったのが、60%とかなり良好になってきている。

集学的アプローチ

各専門家がいる施設が望ましい。

FIRE-3では切除可能率が大学病院では25%、非大学病院で16%Private病院では10%と施設間格差があり、各専門家の連携が重要である。

感想

大腸癌はCancer freeの状態にすることで予後が改善する疾患であり、積極的な切除が望ましい。

 

肝転移については部分切除ぐらいであれば、そう問題にはならないが、切除が微妙な症例は結構ある。

Initially unresectable例は積極的に専門施設に送った方が良いということと、肝動注が結構有効、

肝移植がかなり予後が良いということが勉強になりました。

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