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局所進行直腸癌に対する骨盤内臓全摘の成績

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大腸領域では最も大きい手術の骨盤内臓全的に関する検討

雑誌:Annals of Surgery

アイルランドのSt Vincent大学のKelly先生を筆頭著者にするPelvEx Collavorativeグループの研究

Introduction

3割の直腸癌は原発の局所進行直腸癌(LARC)として見つかる。6-10%の患者が骨盤内臓全摘(PE)が必要となる。

再発癌よりもLARCの方が予後が良く、R0切除が最も重要な予後予測因子である。

5年生存率は10%程度であったのが、近年、単施設の報告では22-66%まで向上してきている。全世界での5年生存率と長期の生存の因子を決定することを目的。

Methods

2004-2014

後方視的検討

27施設

PEはTPEとAPEとPPEの3種類。骨盤内臓全摘(TPE)は直腸・脾尿生殖器・リンパ節・腹膜を一括にして取り出す。前方骨盤内臓全摘(APE)膀胱±生殖器の切除、後方骨盤内臓全摘(PPE)は膀胱温存の直腸±生殖器切除と定義。

R0はCRMが1㎜より大きいもの、R1は1㎜以下、R2は肉眼的に腫瘍が遺残。

Resuluts

1291人がPEを施行され、年齢63歳、BMIは24。

組織

R080%R113%R22%

リンパ節郭清個数は14個。術前治療すると13個、なしだと23個。

術前療法

78%が術前治療あり、64%が化学放射線療法(CRT)、10%が放射線療法(RT)、3%が化学療法(CT)。

仙骨切除は術前療法群が多い(14% vs 5%)。

術前療法はR0切除に影響を与えなかった。

在院日数は16日、術後30日で16%が入院のまま。38%がCD grade3/4の合併症あり。

CD grade3/4の合併症は術前療法ありで1.7倍

術前療法の有無は再入院、手術・放射線治療介入、再発率、在院日数に影響なし

OS

37か月の観察期間。

マージン・リンパ節陽性・年齢が単変量解析で有意。

術式は影響与えず。

MSTR043か月、R121か月、R210か月、3OSR056%R130%R28%

術前療法ありはMST36か月、術前療法なしはMST26か月だが、有意差なし。

 

CRTでは37か月、RT53か月、CT33か月で有意差あり。

リンパ節陽性はMST31か月、陰性は46か月で有意差あり。

仙骨切除は同等。

 

コックス比例ハザードモデルで、多変量解析はR1R0と比較し、HR1.8R2R0と比較し、HR3.1。リンパ節陽性はHR1.27。

Discussion

R0とリンパ節陰性が予後因子。

術前療法は非切除の可能性のある腫瘍を切除可能にするために用いられる。

RTで予後がよかったが、選択バイアスの可能性がある。

QOLについて触れている論文は少ないが、女性、TPE、マージン陽性でQOLが悪いが、多くの患者では徐々にQOLは改善する。

術後療法の生存に与える影響と前向き検討が不足している。

 

 

感想

放射線治療が予後がよかった結果であるが、本文中にある通り、選択バイアスの影響がかなり大きそう。

これだけの施設での術式になると、術前治療の適応や、術前治療のプロトコール、手術の方針などがかなりの差異がありそう。

ここから先は前向きにやらないとわからない。

合併症が増えるが、R0となりうるのであれば術前治療をやろうというのが結論。

あまり臓器温存については触れられていなかったが、臓器温存の可能性が探れるのであれば術前治療は行うべきであろうと思う。

術前療法、特にCRT後にリンパ節を見つけるのが困難で、芋掘りに難渋することはよくある。

 

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