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病院経営 勤務医の視点

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昨今の病院経営は非常に厳しい環境が続いている。

高齢化社会の進行、それにともないひたすらに増え続ける医療費。

保険制度のなかで、病院はそれほど儲からないようにできている。

今日は、病院の一勤務医が病院経営について考えてみた。

 

病院経営の理念

 

病院経営の理念はfor the patient, for the employee, for the hospitalの順でなければならない。

 

病院経営は儲からない

 

そもそも儲からないように、お上が調整しているのが大きいのだろうが…

2016年の病院運営実態分析調査の概要によれば、72.9%の病院が赤字、自治体病院では89.0%が赤字と、赤字の病院が大多数である。

勤務医をしていても、病院上層部からの結構な圧力がある。病床稼働率を増やせだの、入院中に不要な検査・対診をするな、などなど。

 

病院が儲かるために不正

 

病院の経営状態をよくすることが念頭にあれば、極論不正がはびこることになる
外来で明らかに不要な検査をしたり、入院でさせて不要な治療が増加することになりかねない。

診療報酬の不正請求も毎年発生している(もっとも、お金が大好きな人は一定数いるので、病院が儲かる制度であっても関係ないであろうが゙…)

世の中にはグレーゾーンなど山ほどあり、法の抜け穴など無数にある。

そういった不正をしばることができるのは法の制度ではなく、患者さんのために、従業員のためにという倫理観なのである。

 

病院が儲かる以上の価値

 

最も好ましいパターンは、

患者さんに利点があって、従業員にも利点があって、病院にも利益がある

というパターンである。

ただ、こういうパターンは非常に珍しい。全部を成立させるのではなく、一つないし、二つ成立させるというのがやっとだろう。

病院に利益をもたらすというのは短期的には良いことかもしれないが、長期的なベースとして患者のため、従業員のためがなければ、結果として患者さんを減らすことにつながりかねない。

 

患者さんのために

患者さんのためにというのは並大抵のことではない。

患者さんの言うとおりに何でもするというのは患者さんのためではないからだ。

患者さんのいうことは往々にして間違っている。それは医療の素人だからやむを得ず、なんら責められることではない。

時間をとって説明し、誤解を解きながら、納得して治療を受けてもらうというステップが必要なことも多い。

患者さんのためだけを考えれば、極端な話、時間外いつでも説明すればいいし、主治医が私用携帯の番号を教えて24時間365日対応するようにすればいいし、患者さんの暴言・暴力に耐えて、医療者は仕事をすればいいのである。

が、そんなことは考えてみなくてもわかるが異常な発想である。従業員の士気が続かない。

病院にかかる費用をタダにしろという患者さんは少ないが、上記内容を病院の従業員に強いてくる患者さんは一定数存在する。

こういった問題が徐々に表面化してきており、入院時の誓約書で患者さんにいろいろ署名させることも増えてきているが、それ以上に十分な患者さんへの周知が必要であろう。

 

従業員のために

 

従業員を安く働かせ、利益を出そうとする病院は多い

残業時間を少なく申告させ、無償奉仕を強いる。いわゆるサービス残業である。

以前ネットで読んだ話だが、外国人労働者が、「日本人は仕事の開始時間は守るが、仕事の終了時間は守らない」と言っていたとのことだ。これも外国人看護師受け入れの話だったと思う。

まずは残業代をしっかりペイとして払うことが必要であろう。

従業員のため、そして病院のためには、そもそも残業を減らすということが一番であろう。つまり業務の効率化である。

専門職は専門の分野に注力し、誰でもできる仕事は、労働単価の安い方にやってもらう、いわゆるタスクシフティングである。

大学病院が医師にとっては地獄のような環境になりやすいのは、医師は時間外に何時間働かせても無料という悪しき伝統があるからだ。

事務職員を雇うよりも医師にタダ働きをさせておけばよいという発想になりがちである。

医師を一人雇用しているということに対する正当なインセンティブが発生しない制度でやっていれば、永久に改善しない。

誰でもできる内容のためにサービス残業、このようなことを続けていれば、当然従業員の士気も下がることになる。

金銭だけが人のモチベーションではなく、満足のいく仕事というのも従業員にとっての重要なモチベーションなのである。

 

病院のために

 

病院経営の要点は、やはり上の2点がある程度認められた上で行うべきであろう。患者満足度が小さい病院には患者さんは寄り付かなくなる

従業員の満足度が低い病院には、良質なスタッフが寄り付かなくなる。その後、病院の評判は悪化し、患者さんは敬遠さらに負のスパイラルに陥る

 

病院の差別化を図る

 

同じような機能も持った、同規模の病院が多すぎることが問題である。

いわゆる、「とんがった病院」になることが必要だと思う。なんでもできる病院は、結局何にもできない病院なのである。

この臓器ならA病院、あの疾患ならB病院、その手術ならC病院というぐらいにとんがると、病院経営的にも、従業員のプライドにもプラスだし、患者さんもこの病院に受診したいという動機が強まる。

もちろん、これしかできないでは病院として危ういので、そこに付随するように最低限の診療科・医師数・看護師などの医療職を配置するのが良いのではないだろうか。
勤務医にとってもそういう病院は、勤務することによって得られるメリットもはっきりしており、モチベーションアップにつながるのではなかろうか。

 

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