雑誌:Lancet Oncology 2013年
VU大学病院のMartijn H G M van der Pas先生
Introduction
自律神経を温存したTMEの導入で直腸癌の成績が向上し、局所再発も大幅に減少。
腹腔鏡の大腸手術は安全で、疼痛が少なく、早期回復が可能で、開腹手術と同等の生存が可能となっているが、直腸癌の報告は少ない。
COLOR II(Colorectal cancer Laparoscopic or Open Resection)の短期成績の報告。
Methods
8か国の30施設
RCT
肛門縁から15cmまでの腫瘍(下部<5cm, 中部: 5-10cm, 上部: 10-15cm)
腸閉塞、遺伝性大腸癌、ASA3度以上などは除外
腹腔鏡:開腹が2:1の割り付け
Results
2004-2010年
1044人が解析対象で、腹腔鏡が699人、開腹が345人
術前療法は同等
Diverting stomaは1/3で造設
上部直腸が35%、中部直腸が50%、下部直腸が15%程度
自動吻合器による吻合は、上部で90%、中部で76%、下部で13%。
全体の34%がAPRかHartmann
手術時間中央値は240 vs 188分(有意差あり)
出血量は200 vs 400ml(有意差あり)
開腹移行率は17%の理由は狭骨盤が22%、癒着が12%、肥満が10%など
鎮痛薬の使用は同等であったが、開腹では硬膜外麻酔が入っている症例が多い。
排ガスは2 vs 3日目(有意差あり)
1L以上の飲水は0.2日腹腔鏡群で早い(有意差あり)
腹腔鏡手術は術後在院日数は8 vs 9日(有意差あり)
術後合併症は両群約40%、リーク率も10-13%とほぼ同等
再手術は6%、ドレナージは1-3%
28日以内に1-2%が死亡
DM・CRMは同等で、PMは開腹群で長い
下部直腸のCRM陽性は腹腔鏡で少ない(有意差あり)
Discussion
腹腔鏡手術では手術時間が長く、出血量が少なく、排ガスと飲水は早く、在院日数も短い結果。
下部直腸でCRM陰性が多かったのは、骨盤深部がよく見える効果が大きいのであろう。
Limitation
周術期のプロトコールが標準化できていない
感想
どの研究でもいえることではあるが、日本では直腸間膜内のリンパ節を術後標本整理する過程でCRMが評価不能となる。
CRMの評価のスタディが走っているのは知っているが、結果は当分先になる。
病理医の負担になるであろうし、スタディの結果に応じて、標本整理が変わるかどうかはまだなんとも言えないところであろう。
出血量が有意差ありで少なかったが、出血量200mlもあれば、腹腔鏡手術としては血の海に近いような気がする…
JCOG0404についてもそのうち紹介します。