雑誌:New England Journal of Medicine 2015
The Swim Across America LaboratoryのD. T. Le先生
Introduction
PD-1経路はTh1細胞性免疫を抑制するネガティブフィードバックシステム。
多くの腫瘍ではPD-1経路が活性化している。
抗PD-1抗体薬は変異数が少ない大腸癌では効果がほとんどないが、たばこや紫外線で惹起される変異数が多い癌では効果が高い。
MSI癌では効果が高いことがわかってきた。
Methods
3施設のPhase II試験
3アーム試験(コホートA:MMR欠損大腸癌、コホートB:MMR通常大腸癌、コホートC:MMR欠損の他の癌腫)
ペンブロリズマブ投与量は10mg/kgを2週間ごと(日本の保険適応は200mgを3週間ごと)
Results
患者背景はコホートAで年齢が若い。
生殖細胞系変異はコホートAで80%、Bで0%、Cで44%。
長期成績の解析はコホートA:10人、B:18人、C:7人
Lynch症候群での奏効率は27%だが、Lynch症候群でないMMR欠損腫瘍の奏効率は100%であった。
Safety assessment
紅斑と掻痒が25%、甲状腺炎・甲状腺機能低下が10%、無症候性膵炎15%
腫瘍マーカー
コホートAで7/10で低下。Bは低下なし
1コース後14-28日測定のCEA低下の程度がPFSとOSの予後予測因子となる。
画像変化に先行する。
免疫組織学的解析
MMR欠損癌では腫瘍の先進部でCD8陽性免疫細胞が多い。
Discussion
MMR欠損癌ではTH1関連サイトカインが豊富な環境であるが、免疫チェックポイントリガンドが強く発現しており、免疫寛容状態となっている。
CEAは画像変化に先行して動くので、surrogate markerとして使用できる。
癌腫よりも腫瘍組織のゲノムのタイプによって、治療に使える可能性がある。
感想
MSI-H固形腫瘍でペンブロリズマブが使用可能になりました。
2019年版大腸癌治療ガイドラインでもMSI-Hでの2次治療以降で選択可能となっています。
考察ではでてきませんでしたが、Lynch症候群ではあまりペンブロリズマブが奏効しないにもかかわらず、体細胞系での変異では100%の奏効率であったとのこと。
組織学的所見はほぼ同様であるにも関わらず、何か違う腫瘍因子があるのでしょうか?
副作用プロファイルがまた通常の薬剤とは異なるので注意が必要ですね。