ご自身のご家族や、自分の患者さんの入院日数はどれぐらいでしょうか?
術後の入院日数について、一外科医の管理人が思う日数について考えてみました。
入院期間は短い方がいい
当たり前のことだとは思いますが、入院期間は短ければ短い方が良いと思います。
高齢化が進む病院での入院期間の延長は、
①下肢筋力の低下からの寝たきり
②認知症の進行
が大きな問題となります。
下肢筋力の低下
よくある話ですが、高齢者が入院をきっかけに下肢筋力の低下が進行し、一気に寝たきりになることがあります。
高齢者はそもそも予備能力があまりありません。
元気そうに歩けているように見えていても、後一押しで歩けなくなるような状態の高齢者は多く、入院だけが原因ではなく、病気になったというだけで歩けなくなってしまうことがあります。
多くの病院ではリハビリがそれほど重要視されているように思いませんし、リハビリを30分したからと言って、後の23時間30分をベッドで寝たまま過ごすようでは、体力は低下する一方です。リハビリで習ったことを踏まえて、自分で動くようにしなければなりません。
また、病棟もなかなか手が回らず、患者さんのケアがメインになり、歩行練習はなかなかできていない病棟がほとんどではないでしょうか?
高齢者がひとたび寝たきりになってしまうと、再び歩くことはかなり難しいと言わざるを得ません。
寝たきりになると本人のしたいことは大幅に制限を受けることとなります。
トイレに行けなくなれば、おむつを替えるなどの介護者の負担は増加することとなります。
心肺機能の低下、および褥瘡などの様々な問題が出現してきます。
認知症の進行
入院中の認知能力の低下がすべて、認知症の低下ではありません。
高齢者ではせん妄と言われる、環境変化やストレスに伴う認知機能低下がよく起こります。
あまり一般の方にも認知されていないことと、おとなしいせん妄は医療者サイドでもせん妄として認識されていないことも多いのが実情です。
せん妄であれば、原因が除去されれば(環境変化が原因なら退院)すれば改善が期待できます。
長期の入院になれば、刺激が少なくなって、認知症が大幅に進行することもあります。
認知症の進行に伴い、徘徊や物とられ妄想などの認知症の様々な症状が出現してくると、介護者の負担は大幅に増えることになりかねません。
予定手術に伴う入院
内科のことはわかりませんが、予定手術後の退院までの日数は2週間までと考えています。
どんなに苦労した時でも、1か月までにはなんとか退院いただきたいと思います。
※緊急手術の種類、全身状態によってはこの限りではありません
入院期間を短くしたい理由は二つです。
①家族にとって、高齢者がいない生活が普通になる
②病院の評判を良くする
おじいちゃん・おばあちゃんがいない生活が普通になる
個人的な経験ですが、家族にとって、約2週間程度の入院期間であれば、おじいちゃん・おばあちゃんがいない生活が特別な休暇程度の意味で終わることができます。
ただ、1か月を超えてくると、おじいちゃん・おばあちゃんがいない生活が普通になってしまって、退院(=家に帰ってこられる)されると家族の負担が増えてしまって迷惑ということになりかねないからです。
家族が受け入れ不能となれば、転院先や施設を探したりと、入院期間は伸びていく一方です。
病院の評判を良くする
外科の手術で重視しているのは、早期の退院です。
早期に患者さんが元気で帰るということは周囲の評判にも関わってきます。
「え、○○さん手術で入院してたの?え?、しかも癌の手術?こんなに早く帰ってきて大丈夫なの?どこの病院で手術受けたの?」と近所で噂されるぐらいで帰ってもらうのが理想です。
クチコミというのは徐々に浸透するものですが、○○さんに紹介されてとか、○○さんが良いって言っていたのでとかで来られる方は時々おられます。
(医療者にいわないだけで、本当はもう少しいるのかもしれませんが。)
術後早期からの離床を
というわけで、僕が最も重視しているのが、離床です。
消化管(胃とか腸)の手術で、食事が十分にとれるようになった状態で、歩けないから帰れないという状態をゼロにしたいと思っています。
ときどき病院にずっといたいという患者さんもいますが、病院はそんなに長居する場所ではありません。
できたら、医師と顔を合わせるのは外来ぐらい、極論顔を合わせずとも健康に人生過ごせるのが一番です。