雑誌:Annals of surgery 2019
Paus Brousse大学病院留学中の熊本大学の今井先生の論文
Introduction
大腸癌肝転移切除後の5年OSは33-46%。
化学療法の進歩により、根治切除不能肝転移のconversion率は22.5%。
門脈塞栓と化学療法により、2期的肝切除の5年OSは32-64%とされる。
肝切除後の再発は半数に認められる。
腫瘍量が多いので2期的肝切除は1期的肝切除に比較し予後が悪いと考えられている。
2期的切除の3年DFSは6-27%と報告されている。
TSH後再発の治療が与える影響について検討する。
Methods
1992年から2012年
1235人が肝切除をうけ、139人が2期的肝切除を予定。
そのうち、36人(33%)が2期目の肝切除不能で、93人の検討。
術前評価
1期目と2期目の間の化学療法は1期目手術の3週後に開始。(術前レジメンが有効なら継続、術前レジメン無効なら変更)
肝外転移は肝切除の禁忌とはしない。
術後フォローアップ
腫瘍マーカー、CT、USで4か月毎にフォローアップ
Results
Background
93人中、84人が同時性転移、腫瘍数は9個、腫瘍径は診断時41㎜・手術時34㎜。
術前化学療法は97%で施行。1st lineは9サイクル施行され、分子標的薬は58%で使用。
肝外転移は肺に最も多かった。
肝切除と短期成績
1期目は手術時間320分、出血250ml、腫瘍3個切除
2期目は手術時間389分、出血1000ml、腫瘍7個切除
門脈塞栓は91%に施行し、78%は1期目の手術中に施行
3亜区域以上の肝切除は1期目が4%で、2期目が88%
CD3以上の合併症は1期目で9%、2期目で36%(うち90日以内死亡が4%)
長期成績
診断時から42か月(初回肝切除から32か月)観察で、診断時からのOSは1年:97%、3年:75%、5年:44%。初回肝切除後からのOSは、93%、65%、41%。(1年、3年、5年の並びでの%表示)
DFSは28.7%、12.3%、10.5%。22人の肝外病変は13人が切除。全体で根治切除できたのは81人(87.1%)。
そのうち、76.5%で再発。そのうちの53%がSalvage手術可能であった。
OSは手術を繰り返した人で長く、サルベージ手術できた人で長かった。81人のうち、DFSは33% 、14%、12%。再発切除後DFSは55%、31%、23%であった。
6人は最終手術から5年経過し、再発なし。
OSの多変量解析では二木的切除で合併症がなかった。再発後に反復手術が予後がよかった。
Discussion
肝外病変は予後規定因子ではない。59%で肝外病変は切除可能だった。77%で再発している。
DFSは短いが、OSは一回肝切除と同程度である。
2期的肝切除後のような大きな術後であっても、再発に対して手術を繰り返すと予後が良くなる。
重大な合併症は化学療法の開始を遅らせ、追加治療を制限している可能性がある。
腫瘍因子は予後因子とならずに、治療因子(合併症と再発後手術)のみが予後因子となった。
単施設の後ろ向き研究で、観察期間が長く、治療法の変遷があることがlimitation。
Conclusion
2期目の術後合併症を少なく、再発に対し手術を繰り返すことで予後が改善しうる。手術を繰り返すためには積極的な術後のサーベイランスが重要である。
感想
2期的切除はかなり予後が良い。
昔から「大腸癌の転移で切れるものは切れ」とは言われてきたものの、ここまで過大侵襲を加えた後であっても、やはり大腸癌の治療の根幹は手術であると言える。
ただ、そこの治療に対して、専門職種の人間が集まって、手術のタイミングを逸せずに化学療法をしていくことが重要であると考えられる。